ー「単独者のあくび」 尾形亀之助 ー
記憶の引き出しから
何年も前にノートに書き写していた詩が蘇ってきた。
十二月
紅を染めた夕やけ
風と
雀
ガラスのよごれ
尾形亀之助
この詩を読んだ時、擦り切れた畳ににゴロリと横になり
汚れたガラス越しに夕やけを眺めている男を想像していた。
風や雀に気づける男は、仕事には追われていなかったはずだ。
彼の生い立ちは私の空想とはかけ離れていて
餓死を唱え実際に餓死で死んだ詩人というのが意外だった。
彼の詩から感じる一筋の温かい日差しを、死に際に感じる事ができただろうか。